【改訂版】異世界でわたしは恋をする
ウィルは切なく笑った。
その笑みに、ギュッと胸が締めつけられた。

「私は善人じゃない。所詮その程度の男なんだ。お前の幸せよりも、自分の気持ちを優先した。・・・ごめん」

「ウィル・・・」

そんな風に思っていたなんて、知らなかった。

あの時、ああ言ってくれたのも、全てウィルの本当の気持ちだった。

それを私は・・・。

「本当は、あのメルンの花の中で、ユーリにもうひとつ言葉を伝えたかった。でも、その言葉を言ってしまったら、私はお前を返せなくなる。自分のものにしてしまいそうだった。だから、言えなかった」

そう言うと、ウィルはちいさく息を吸い、呼吸を整えた。
そして私を揺るぎのなくなった瞳で見つめた。


「・・・言ってもいいか?」


瞳からひとつ、またひとつと涙が零れていく。

その言葉を聞いたら、私ももう戻れなくなってしまうだろう。


――だけど。

聞きたい。


その言葉を、聞きたい。





「ユーリ、お前のことを愛している」




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