【改訂版】異世界でわたしは恋をする
「本来なら、召喚した者の描いた円陣の中に召喚されると聞くが、何もない庭に倒れていたところを見ると、術が未熟だったようだ」

「なぜ私がこの世界に?」

「さあ、それはわからない。第一、召喚の魔術はこの世界では禁術とされている。その術を知りうる者も、相当な魔力を持つ魔術師か、私のような王族の一部しかわからないからな」

「ただ」

「ただ?」

「何か良からぬ事が水面下で動いているんだろう」

ウィルはそう言うと、私に背を向けた。

良からぬ事。

その言葉がやけに重く聞こえてしまう。

私は知らない間に、何か悪い事件に巻き込まれてしまったみたいだ。


だけど、どうして私?

私をこんな世界に連れて来て何をしようと・・・?



「あ、あの・・・私、これからどうすれば・・・?その、ろ、牢屋とかには入れないよね?」

怖くなってつい、聞いてしまった。

こんな素性の分からない人間を、のうのうと住まわす訳がないと思ってしまったから。



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