東高★男子サッカー部~私の仕事はマスコット



「キャプテン、明日頑張ってくださいね」



頑張って笑った私をちらっと見たその表情は……硬くて。



やっぱり私なんて全然眼中に無いのかな、そう思うと悲しくなる。



それでも



「明日まで……だな」



そう言って優しく腕の中に包み込んでくれるから……。



これが最後かもしれない、私も精一杯手を伸ばして大きな背中を抱き締めた。



練習後だからなのか、早鐘のように鳴り響くキャプテンの心臓音が心地良い。



きっと、私も今凄くドキドキしてるけど……かき消してくれてるよね?



こんなに近いのに……今この胸はみんなのもの。



たくさんいる中の一人、として記憶から消えてしまわないように。時間が許してくれる限り無言でそこに居続けた。



キャプテンも、何も言わないまま。



時間にしたらきっと2、3分。



ただ、黙ってキャプテンの胸の鼓動を聞いていた。



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