見えちゃうけど、好きでいて
1.
~レニの涙~
「お、お願いは聞けませんから、どっか行ってください」
横断歩道で、信号待ちをしている女は、誰もいないところで一人で話をしている。
周りの人たちは、そんな女に不審なまなざしを向けている。
「だから、無理なんです」
おびえながら、手を広げる女の行動を見かねた人が「あの人誰としゃべってるのかしら」とわざと聞こえるように話した。
女はぴたりと動きを止めた。
自分のしている行動がおかしいと、認識したようだ。
あたりを見回し身を縮めながら、その場を後にした。