見えちゃうけど、好きでいて
「うちの会社もだんだん株が下がってるって噂だし、ここで結婚でもして、株をあげようって魂胆が見え見えなんだよ」

ぶつぶつ文句を垂れながら、ジャケットを受け取ると「今日は行かない」と断言した。

「そ、それは困ります」

「別に困らないだろ。次の見合い相手を探す楽しみが出来たんだ。義母さんも喜ぶんじゃないか」

「それでは、お相手様に失礼に当たります。せめて一度お顔だけでも見ていただいて……」

「そうか、直接断ればいいのか、あんたなんて興味ないって」
顔は笑っているが、目は冷めきっていた。

「正宗様……」

ほとほと呆れた顔で、男を見上げながら、男の後ろについた。

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