見えちゃうけど、好きでいて
足早にファミレスを後にした女は、顔を下に向け耳をふさぎながら歩いた。

「ヘッドホン、忘れちゃったから、急いで帰らないと……」

眉間にしわを寄せ、周囲を気にしている女の目の前に大柄な男が立ちふさがった。

「きゃぁ!!」

その声に驚いた周囲の人たちは、足を止め女を見た。

その場にうずくまり震えている女はしきりと「私には無理です。何もできません」を繰り返していた。

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