森下くんの恋愛事情
「すいません。ありがとうございます」
「いいのよ、そんなこと。気にしないで?」
「はい」
なんだろう。この人と莉音の間に踏み込めない一線がある気がする。
見えないけどきっと分厚くて強力な壁。
「それじゃあお母さん、入院の手続きをしたいので別室に」
「はい。莉音ちゃん、あまり無茶しないでね」
「わかりました」
お医者さんと女の人が出て行ってから、入れ違いに藍川さんが来て。
「莉音、大丈夫?」
「あ、七星。大丈夫だよ。七星は?
私、強く蹴りすぎたと思うんだけど…」
「大丈夫だよ!」
「よかった」
互いの無事を確認してニコッと笑ったあと、藍川さんがこっちに気づく。
「莉音、この子名前は?」
「悠李」