森下くんの恋愛事情
結局、4人に抜かされて莉音にバトンを渡す。
それでも莉音はトラック1周を全力で走って、1位でゴールしてくれた。
そのまま、僕のところに走ってきて抱きついてくる。
「ほら、大丈夫って言ったでしょっ」
それは、確実に僕だけに向けられた笑顔で。
涙が出そうになった。
久しぶりで、でも今までと変わらないふわっとした優しい笑顔だった。
僕は兄貴に担がれて、保健室へ行く。
「ごめんね。兄貴」
「いいよ、別に。
そんなことより聞きたいことがある」
僕の足を見ながら、兄貴は言う。
莉音の、ことかな。
兄弟だから。
双子だから。
なんとなくだけど言いたいことがわかる。
「莉音のこと。今でも好きか?」