森下くんの恋愛事情
「お母様。今回の婚約の件。なかったことにしてください。
私には、好きな人がいるんです。
今までも、これからも、大好きな人が。
守ってくれる、大好きな人が」
「何をいっているのっ!?」
この女には話が通じない。
それでも良かった。
私の気持ちを言っておきたかった。
パパは私のことを見ながら呆然としている。
そこに私は言った。
ここで主役としての最後の言葉。
「お父様、私は婚約なんてしたくありません。
今回のことなかったことにしていただけませんか?」
パパは驚いた顔をした。
でも、ニコッと笑って。
「いいよ。なかったことにしよう。
結婚したことも少し考えてみるよ」
そして、私はカメラに向かって頭を下げた。
悠李の手をとって後ろのドアから出て行く。
よかった。
来てくれてよかった。