森下くんの恋愛事情
そのあとは、もう無言。
高梨さんは、疲れているし。
僕も今までにないくらいの人に追い掛けられた。
二人共息が上がっていて。
無言というよりは、ただただ言葉がかわせなかった。
それでも、高梨さんは気遣ってくれたのか喋りかけてくれた。
「き、きつい!運動神経落ちちゃったな。
前までは、こんなこともなかったのに」
「大丈夫?」
「もう無理。テキトーに目の前にある道走ってきたけど、
ここがどこだか、全然わからない」
「ありがとう。助けてくれて」
「いえいえ。中学の頃もこういうのあったから私は、慣れてるけど。
森下くんは慣れてないかなっと思って」
「うん。追いかけられたこともあったけど、
あんなに大人数は、初めて。
高梨さんは、いつもあんな感じ?」
「うん」
正直だね。
もともと人気だったんだろうなあ。
高梨さんは、あんなに大人数に追いかけられて辛くなかったの?
そもそも、追いかけられるようなことをおこしていたのか?
そんな疑問が頭に出てきていた。
ただ、高梨さんは、そんなものじゃなかった。