森下くんの恋愛事情

そのあとは、もう無言。

高梨さんは、疲れているし。

僕も今までにないくらいの人に追い掛けられた。

二人共息が上がっていて。

無言というよりは、ただただ言葉がかわせなかった。

それでも、高梨さんは気遣ってくれたのか喋りかけてくれた。


「き、きつい!運動神経落ちちゃったな。

前までは、こんなこともなかったのに」

「大丈夫?」

「もう無理。テキトーに目の前にある道走ってきたけど、

ここがどこだか、全然わからない」

「ありがとう。助けてくれて」

「いえいえ。中学の頃もこういうのあったから私は、慣れてるけど。

森下くんは慣れてないかなっと思って」

「うん。追いかけられたこともあったけど、

あんなに大人数は、初めて。

高梨さんは、いつもあんな感じ?」

「うん」


正直だね。

もともと人気だったんだろうなあ。

高梨さんは、あんなに大人数に追いかけられて辛くなかったの?

そもそも、追いかけられるようなことをおこしていたのか?

そんな疑問が頭に出てきていた。

ただ、高梨さんは、そんなものじゃなかった。

< 66 / 585 >

この作品をシェア

pagetop