好きだと言えたら[短篇]
好きだと言えたら
「…はぁ」
「橋上君。鬱陶しい。」
「…すんません。」
職場で大きな溜息。
そんな俺の横で、明らかに迷惑そうな表情を浮かべた美人上司こと、小百合さんが俺を見下ろしている。
「何?…また、彼女さん?」
「あ、バレてました?」
どすっと大きな音を立てて俺の隣の椅子に腰をかける。
「バレてましたって…橋上君が悩む原因なんて彼女さんのことしかないじゃない。」
ふぅ~っと
わざとらしい溜息を吐き俺の瞳を捕える。
「で、どうしたわけ?」
俺、橋上哲平。
一応、社会人。
「哲平、日曜暇?」
遠慮がちにチラチラと俺に視線を向け、聞こえないくらい小さな声で問いかけてくるのは恋人の朱実。
「…あー、無理。」
確か日曜は臨時の会議が入ってたっけな。
遠慮がちに俺を見るその瞳。
その瞳にいつも俺は柄にもなくドキドキしてしまう。
そのドキドキを紛らわすため、またドキドキしていることを隠すため、俺は無意識のうちに言葉にとげを含んでしまう。
…あ、
やべっ
そう思ったときにはすでに遅し。
「そっか。」
ほら、また。
朱実は悲しそうな笑顔で俺を見るんだ。