好きだと言えたら[短篇]
初めて。
俺が初めて。
「じゃあ、たっぷり教えてやるよ。な?」
何をかって?
んなの、言えるかよ。
上機嫌な俺を怪訝そうな顔で見上げる朱実。
「…哲平、お酒臭いから嫌。」
……って、酒!?
酒臭い!?
つか、そんなの
「関係ねぇよ。…つうか、もう抜けた。」
そう、とっくの昔に酒なんか抜けてる。
「…バイバイなんて言われて、鍵も返されて、酔いも醒めたっつの。」
てか、初めから
そんなに飲んでねぇし。
隣で朱実がポカポカと俺を叩くが完全無視。痛くも痒くもねぇんだよ、んな抵抗されても。"嘘"と連呼する朱実の腕をグイっと1回引き
再度、唇を奪ってやった。
だって、
黙らねぇんだもん、コイツ。
「こ、この、キス魔!!」
恋愛なんて糞だと思ってた。でも、そんな俺に"恋"を教えてくれた朱実。初めて味わった恋の辛さ。そして喜び、そして愛しさ。
諦められなくて
必死でもがいて
そして手に入れた。
「ねぇ、キス…頂戴?」
二度と、離してなんかやんねぇから。
「…キス魔はどっちだよ」
絶対、
朱実だな。
ふっと笑みを漏らすと
俺は腰をかがめ、顔を傾けた。
愛しい
初めてそう、思った。
「後は帰ってから。」
軽く触れた唇を
すぐに離してニヤリと笑う。
今日、もう一度言おう。
好きだって、
俺と、付き合ってくれって
はっきりと
君の瞳を見ながら。
もちろん
返事は"Yes"
しか受け取らないけどな。
「哲平?」
「んぁ?」
「大好き。」
「っ!?」
END