~悪魔執事とお嬢様~
「まあ、それもそうでしょうが、
勝手に見本を見せると
邪視をかけられそうなので。」
「お前が私をどういう目でみてるのか非常に
気になるところだな。」
確かに私の碧眼は邪視があると言われて
“いた”が、あくまでも中世ヨーロッパの
話で、19世紀ではない。
「敬語が話せないほどお怒りとは…。
まあそれはいいとして、弾けそうですか?」
「さあ。音が出るかさえもわかりません。」
一応理屈は覚えている。
どこをならせばどの音がなるか、とかな。
「では、一先ず始めてみてください。」
「あぁ。」
「返事は“はい”です。」
「はい。」
いちいち面倒なやつだな。
私は最後の力を振り絞るつもりで
ハープを奏でた。
悪魔のトリルほど曲を
把握していないのもあって、
間違えるというより、
手が止まるということが多々あった。
しかし、思ったよりは覚えていたようだ。
五歳の記憶なんて残っていないかと
思っていた。
完璧に思い出したのは、殆ど後半からだ。
いきなり早く弾くのは無理なため、
ゆっくり弾いた。
そのせいでまさか難易度の低い曲に
1時間半も使うだなんて夢にも
思わなかったが。
その上、これだけで午前が
終わってしまい、ランチを
摂らなければいけなくなった。
私の時間がどんどん減っていく…………
ランチの味は悪くないが。
「後、歌とダンスか。」
シリウスが私のカップに
紅茶を注いだとき、私はそう呟いた。
「それと絵画です。」
「本当にやるのか…。」
「ええ。」