~悪魔執事とお嬢様~
「…ハァ。一々疲れる言い方が多いですね。
毒舌をやめてもっと従順になっては?」
「そうしましたらお嬢様は私の事を__」
「好きになるかならないかは別として、
今よりは激しい嫌悪を覚えないでしょう。」
そんなんで好きになれんなら世の中
恋愛なんて簡単にできるわ!!
というか、“私”という存在はシリウスに
とってただの食事なはずだ。
私を完璧に自分の手中へ入れるのが
目的だとしても、一方的アプローチを
するのは浅はかすぎる。
これもお遊びなのか?
チッ。よく分からない。
自分の思い通りに行かないときは決まって
腹が立つが、その感覚を数倍高めたかの
ような気分だ。
「そうですか。ではやめても無意味ですね。
それはそうとして、お食事は
終わりになりましたか?」
「それはそうとしてではありませんが、
ええ。そろそろ空腹も満たされましたし。
あ、ダンスと歌を30分ずつ
することは可能ですか?」
「できなくもありませんが。
何かなされたい事でもあるのですか?」
さっきから言ってんだろがバカタレ!!
わざとらしく訊くなんて…流石に人格が
恐ろしいほど歪んでると疑うしかないぞ?
「そんなことはどうでもいいです。
すぐに始めてすぐに終わらせてください。
特に歌!!」
「かしこまりました。ダンスの時間を
縮めて歌の時間を伸ばしましょう。」
ふざけんな。
こんな、こんな酷いことがあるか…!
音痴も問題だが、そもそも私は歌うこと
自体が大嫌いだ!
喉は渇れるし、一々注意されるし、
いいことなんてなんにもない。
奴は嘲笑しながら私を眺めている。
性悪説が正しいと思っている私も、流石に
ここまで根本が歪んだ奴には驚く。
…一応悪魔なのだし、歪んでいるのは
当たり前だが。
「チッ。……It's so nice of you.
(お前は本当に“優しい”な。)」