~悪魔執事とお嬢様~
「もったいなきお言葉、恐れ入ります。」
笑顔なのがまた何億倍も腹が立つ。
「では参りましょう。
クルト、キルと、アルト、
皿の片付けをお願いします。」
「はい。」
「わかりました。」
「今すぐ。」
私はシリウスとセーラに着いていき、
また大広間へ行った。
蓄音機をシリウスがかけ、
手拍子をうった。
手袋をしているわりによく響く。
「セーラはお嬢様の背中を左手で添え、
お嬢様はセーラの肘に左手を
添えてください。
右手は手を繋いで。」
私だってどんなポーズをとればいいか
くらい分かるが、セーラがな……
「はい、ワン、トゥ、スリー、
ワン、トゥ、スリー……」
ダンスは、得意でも不得意でもない。
だからやろうがやるまいがあまり困った
状況にはならないはずだ。
どうせレディーの嗜みだから
やらなくてはいけないが。
「ワ、ワワワ、ワン、トゥ、トゥ、スス、スリー、ワン、トゥ、スリー…」
セーラの息づかいが荒い。
緊張しすぎなのだろうな。
ダンスなんて生まれてこの方やったことがないだろうし。
私はこっそり彼女の耳元で囁いた。
「そんなに身体を固くしなくていいですよ。
もっとリラックスしてください。」
アドバイスにすらならんだろうが、
なにもないよりはいいだろう。
それのお陰かもしれないが、
セーラのぎこちないステップは、
形だけでもうまくなった。
真面目にどっちがレッスンを
受けているのか分からなくなる。