~悪魔執事とお嬢様~
「お嬢様、セーラに教えるよりも先に
ご自分の足取りを整えてください。
いつも最後のステップがずれていますよ。」
……私も間違いがあったか。
気づかなかった。
「最後のステップ……」
私が間違っていたというより、
踏み方そのものを誤解していたようだ。
「どちらもいけませんね。
セーラはいいとして、お嬢様は
覚えてもらわないと困りますよ。」
反論する気はない。
やらなければいけないことは
しっかりやらなければならないのだから。
正論に反論は、
あまりしないことにしている。
明らかに刺のある言い方なら別だが。
「…………すみません。
一度音楽なしで行っても?」
「いいでしょう。
では、私の手拍子に合わせてください。」
「まーだやるんですか!?
私もうヘトヘトですぅ!!」
ハァ、ヘトヘトなのは私も同じだ。
てか、主人の前でそんなこと言うなんて
たるんでる。
「あ?どちらがご主人様ですかな~ぁ?」
「ヒッ!かか、かしこまりましたご主人様!」
私は得意の嘲笑と鋭い瞳でギロリと
睨んだ。
セーラの方が背が高いため、
下から見上げる形になってはいるが、
私の怒った姿は前も言った通り怖い。
セーラはそうなることを予測したのか、
すぐに黙ってダンスを始めた。
「ワン、トゥ、スリー、
ワン、トゥ、スリー………」
踊っている間、
時計が目から離れなかった。
けして、厳かにしたと言うことではない。
ただ、極端に時間を気にしていた。
今はこうして優雅に踊っているが、
それもできなくなるくらい深刻な
問題になりかねない。
フォスター社は赤字だが首の皮1枚、
いや、溶かした蝋でなんとか形を
保っている。
だがこれも時間の問題だ。