~悪魔執事とお嬢様~

蝋が折れればフォスター社は倒れ、私に
残るのは貴族の名前と借金だけ。


チェックメイトと叫ぶのは確実に
ライバル社だろう。


ただ、今の時点ではチェックメイトに
なっていない。

チェックと宣告されただけなのだ。

蝋も場合によっては金属で
固めることができよう。


時間があればな。


ああ、そうだ。


“とてもとてもやさしい
天使のような悪魔”が

私のために時間を気にしてくれるなら
溶けた金属で傷口を固められる。


「ワン、トゥ、スリー、
ワン、トゥ、スリー、はい。

お嬢様が時間を気にしているので、
少し早めに終わります。

次は歌ですね。」



「…………damn it!!(畜生!)」



「何て言葉をお使いになるのですか?
レディーがそのような言葉を…」



あんな小さな声をどうして
聞き取れるんだ!?

あームカつく。


レディーレディーレディーって!!

女に生まれたことをこれほど呪ったことも
そうそうない。



「お嬢様、この場で歌ってください。
伴奏はなしで。

どんな歌でも構いませんよ?」



「あ、あのぉ、私はもう帰っても?」



セーラが息をゼエゼエと吐きながら
そう言った。

少し申し訳ないことをしたかもな。


だが、私の使用人なんだし、
どんなに荒くこき使おうといいだろう。

それに私は主人にしてはとても
物分かりのいい方だ。


使用人を下の名前で呼ぶし、
そこそこの言動は目を瞑っている。



「ええ。仕事に戻ってください。

そのあと、私とシリウスは買い物に
いきます。

帰ったら部屋の模様替えと
倉を燃やす仕事があるので、
他の者に伝えておいてください。」



「はい!ハァ、まーだあるんですかぁ。」



まだあるんですか~!?
とこっちが言いたい。

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