~悪魔執事とお嬢様~


「さ、歌ってください。」



この屈辱、忘れはせん。



「……………Lo,London……」



「ロンドン?」



「っ!

London Bridge is broken down,
Broken down, broken down.」



ロンドン橋落ちたという歌は誰でも
知っているだろう。

私も昔よくキティと遊んだものだ。



でもあのときは歌ってない。



「……ストップ。」



「My fa………」



シリウスの顔は信じられないとでも
言うようにあきれた顔をしている。


そんなに酷いか?



「お嬢様、正直に言っても?」



「ちっ。好きにしろ。」



回りにはシリウスと私以外誰もいない。

私は敬語を使わずに命令口調で
そういった。



「ただの雑音です。」



「知っている。」



「いえ寧ろ、ガラスをフォークで
引っ掻いたかのような不快な音です。」



そこまでいうか……!?

私は「さすがにそこまで酷くはない。」と
否定したが、シリウスは発言を
撤回しなかった。


いやな、私だって本気を出せばきれいに
歌える。多分。



「ハァ、絶望的ですね。
まずはピッチからなんとかしませんと。

吹奏楽器を吹いたことはありますか?」



「フルートくらいしか。」



「吹いたことがおありなら、呼吸の仕方は
わかりますね?

楽器でも絵画でもないのですから、
歌は真剣にやってくださって結構です。


人一倍練習してやっと普通の歌声なのですから。」

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