~悪魔執事とお嬢様~


シリウスはまたピアノの方へ向かい、
Cの音、(つまりドの音)を叩いた。



「音を合わせてください。」



「アーー。」



始め、音は合っていなかった。

だんだん音程を下げていき、
Cと同じ音になったところで息が
限界を達した。



「もっと長く、揺れのない声で。」



私はもう一度、
今度は的確に音を合わせた。


できるだけ揺れのないように大きな声で。


「次から、音を変えていくので
合わせてください。」



「わかった。」



シリウスは、G.A.G.F.E.F.G.D.E.F.E.Gの順に
鍵盤を叩いていった。


しばらくしてからわかったが、
ロンドン橋落ちたの曲になっていた。

ここを何度も歌わされ、
嫌と言うほどロンドン橋の音を聞いた。


何度か……30回くらい歌わされ、
最終的にはピアノをなしで歌わされた。



「アーアアーアーアーアーアー……」



それが終わると、今度は歌詞を付けて
歌い、それも終わると次のステップに
飛ばされ、繰り返すばかりだった。


十分すぎるほど音を聴いたし、
喉も枯れそうになるほど歌わされた。


紅茶をのみたい。

蜂蜜とミルクをたっぷり入れてみたら
美味しいだろう。

久しぶりアップルクランブルなんて
食べてみてもいい。


だが、そんなことをしていては
1日が終わってしまうし、
何よりも店が閉まってしまう。



「心配なさらなくとも、予定通りに
終われますよ?

お嬢様のその
“ナイチンゲールのような美しい歌声”も
もうじき終ります。」



私の顔を見て、どう思ったか悟られて
しまったらしい。

これほど時計を何度も見れば、誰でも
わかるかもしれないが……。



ただ、問題は悟られたことよりも
ナイチンゲールのほうだ。

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