~悪魔執事とお嬢様~


視線を私に向けようとするが、
しかし、私よりも後ろのなにかに
気をとられそうになっている。

シリウスは私の後ろにいるが、
そっちではない。

何を見ている……私は目を細めた。

少年の目を見つめ、その目になにを
写しているのか探るように。



「んっ…!?」



私はすぐさま少年の耳元に囁きかけた。
少年の目には映っていたのだ。


屋根の上にいる、小柄な男の姿が。



「少年、今からいうことを、
yesかnoで答えろ。」



「ye……yes」



「私の後ろに誰かいるのか?」



「yes.」



震える声で、小さく少年は呟く。



「それは、君を雇った人間か。」



「……yes.」



道理で怯えるわけだ。
恐怖の対象にしていたのは、私ではなく
雇い主。

その方が幾分か増な理由になる。



「次はしっかりと話せ。
君の雇い主の目的はなんだ。」



「あなたの……命。」



ーーーシュンッ



「シリウス!」



少年が答えた瞬間、
クロスボウの音が鳴り響いた。

クロスボウを打った人間が
狙っていたのは、少年だった。

しかし少年が狙っていたのは、私だ。


シリウスめ、しくじったな。

あのナイフを取り上げず
放置しておくとは何事だ。


少年はすぐさまナイフを拾い上げ、
私めがけて走ってきた。

自分を狙っている矢があることなど
気づいていない。

シリウスの方を見ると、矢よりも少年を
止めようとしていた。

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