~悪魔執事とお嬢様~
ーーシュンッ
再びボウガンが打たれる。
今回の狙いは私だ。
「くっ……」
逃げようにも動けなかった。
咄嗟の事だからではなく、
動くスペースがなかったのだ。
ーーキーン
耳障りな音が2回聞こえた。
金属がぶつかる音。
ハッとしてシリウスの方をみやる。
どうやら音の原因は、シリウスだ。
少年のナイフを取り上げ、
二本の矢にめがけて投げつけたのだ。
あの高い音は、その矢が空中で
弾き飛ばされた音だった。
すぐにボウガンの持ち主を探したが、
誰もいない。
「逃げられたか。」
一体誰が私を狙う……。
今までの出来事を思い出したが、
家に押し寄せてきた奴ら以外には
考えられなかった。
ライバル社にしても、
手が込みすぎていたし、やりすぎだ。
私だけでなく、少年にも口止めを
図ろうとしていた。
プロの仕業と考えた方が合理的だろう。
「会見の時の記者といい、お嬢様は
よっぽど嫌われているようですね。」
「嫌われもするだろう。
ところで、数秒のうちに50人倒せるお前の
力はどうなった。」
「あくまでも本気を出せばの話ですよ。
それに……」
シリウスは少年の方に目をやった。
まあ、一般人を前にそんなことが
できるわけないか。
「少年、誰に雇われた。」
少年はまだ怯えていた。
どうせ仲間を殺されるなどと
脅されていたんだろう。
本心で私を襲ったわけではないはずだ。
それでも到底許せないが。
「……わからない。
始めは男に金貨10枚で仕事をしないかって
言われた。
それで、俺は乗ったんだ。
けど、仕事内容が人殺しとしって、
俺はやめたいっていったんだ。
そしたら仲間を殺すって……
だからやったんだ……。」
そんなうまい話があるわけもないのに、
なぜ受けたんだ。
「雇い主の外見でなにか覚えていることは
ないか?」
「……紋章。
見覚えのあるやつだった。」
紋章?
貴族の仕業か!?
「シリウス。」
「はっ。」