~悪魔執事とお嬢様~
木のような肉のようなものが焦げた臭い。
鼻を覆いたくなるほどではなくとも、
何かが燃えているのは確実だ。
ごみか何か燃やしているのか?
少年は右側の階段を降り、川へ
向かっているようだ。
この川に何がある?
川といっても水はほんの少ししか
流れていない。
「…うっ」
脚がもう棒のようだ。
ただでさえ重いドレスを着て
走っているというのに。
悪臭も濃くなっている。
口と鼻を抑え、なんとか脚を動かした。
悪臭と共に、煙も漂っていた。
なんだか妙な胸騒ぎがする。
脚に無理を言わせ、私は走った。
「shit!!
本当なら今頃ティータイムだというのに!」
「お嬢様、次に汚い言葉をお使いに
なられたら、稽古事を増やしますよ?
帰るまでお待ちください。
屋敷に到着した次第早急に紅茶を
お淹れ致しますので。」
特にこれといった原因はないのだが、
無性に腹が立った。
誰にたいしてかすらわからない。
恐らく疲れているせいだ。
帰ったら絶対に甘いものを食べよう。
と私は誓った。
今ならエルのつくる
デザートも食べられるきがする。
イタリア人の母親がいてなぜあの
中途半端な味覚を持ってしまったのか。
全くもって謎だ。
多分一生分からず仕舞いだろう。
私は脚を進めた。
徐々に見えだした下水道へのトンネル。
少年は既にそのトンネルの闇に
呑まれていた。
この中に入るというのか。
煙はトンネルから出ている。
嗚呼、私の予想が的中しないことを
神に“祈る”ばかりだ。
煙から身を守るため、屈んでトンネルへ
一歩踏み出した。
「じーちゃん!?ルル!!おいカイン!!
あ…ぁ…う、嘘、だろ!?
おい!ゴホッ、お、い!」
私の足音と同時に聞こえた絶望の声。
少年は咳をしながら必死に仲間の名前を
叫んでいる。