~悪魔執事とお嬢様~


だが、別にいい。

私も奴を利用して復讐をするのだから、
立場は同じはずだ。



「I got it,mine lady.
(かしこまりました、私のお嬢様。)」



シリウスが私に向けてそういう。

ガサゴソと音が聞こえた。


布がすり合う音…、
動く際に服がこすれる音だ。


きっと、お辞儀か何かしているのだろう。

見えんが。



私は、シリウスの放った言葉に違和感を
覚える部分があった。


mine(私のもの)。

普通なら、my(私の)と使うはずなのに。


嗚呼、既に私は、
シリウスのものということか。


まあいい。


私をこんな目に遭わせた奴らを
殺せるなら、誰とだって契約しよう。



「フッ
その意気ですよ。

では、まず始めにあなたのその傷を
癒さなければいけませんね。」



シリウスが言う。


私は『最初から癒しとけ!』と思うが、
それをしてしまったら契約は
できなかっただろう。


何から何まで計算済みのようだ。


ーーカッ、カッ、カッ、カッ


たつことすらままならない今、
音以外に頼れるものはない。

靴音、だな。ブーツでヒールあり。


体を(といっても首しか動かなかったが)
なんとかあげて、顔を見る。


黒のキングとクイーンの間から出てきた。

黒いオーラがシリウスの辺りを
包んでいる。


醜い姿ではないのに、醜く思えた。

底知れぬ恐怖も感じた。


背中には大きな黒い翼。まるで黒鳥だな。


悪魔以外の言葉が思い付かない、
悪魔らしい姿だ。


着ている服はネクタイのタキシード。

全身黒だ。



だがブーツにタキシードは合わない。

ロングブーツだからだ。

なぜそんなものを履いているかなど
知る由もないしきっと一生
分からないだろう。



顔は……思っていたよりいい。


いや、カッコいい。

真の姿とかではないだろうが、
普通の女性なら惚れるかもしれない。



「クス、惚れましたか?」



あぁ、これを言わなければ普通の
イケメンなんだろうが、こいつの場合は

『残念なイケメン』か。


悪魔といえば、大抵雄牛の頭してたり
角生えてたりガーゴイルみたいだったり…

とまあ、分かりやすいほどの
醜い姿だと思っていたがな。


そういうものとはまた違う
醜さと恐ろしさだ。



シリウスが私の近くに来た。


顔がしっかり見える。


黒髪に、暗い赤茶色の目。



「では、失礼して。」



シリウスがそういってひざまずき、

出血が酷い私のお腹のあたりに
手を当てる。



「うっっ!!」



激痛が走った。

私は苦痛で顔を歪めた。



「アァァーーーー!!!」



お腹が異常に熱くなり、心臓は壊れた
モーターのようだ。

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