~悪魔執事とお嬢様~
私は一足遅かったことに後悔した。
ここはもう水など流れない、
川として使われていない場所なのだ。
つまり、ここは彼らの寝床。
ーータッタッタッ
速足で靴音を響かせながら私とシリウスは
少年の元へ向かった。
息遣いや靴音が反響して気味が悪い。
急いで少年をココから引っ張り出すか
火を消すかしないと、
私も少年も呼吸困難で死んでしまう。
「ベニー?フレヤ?なんで、なんで。
そんな、だって、さっきまで一緒に…」
っ!どこだ!
煙でよく見えない。
シリウスすらどこにいるか怪しい。
「なあ、ロ、ロン!早く、
ココから逃げようぜ?みんな連れて…
な?ロ………ン………?
あっ、あぁ!!」
私はなんとか少年の叫び声を
便りに彼を探した。
トンネルは煙が籠ってかなり苦しい。
あと3分ここにいたら絶対死ぬだろう。
私は目を凝らした。
「…居たっ!」
私は座り込んでいる少年の肩を
精一杯掴んだ。
だが、なにかおかしかった。
服が冷たく、さっきよりもボロボロだ。
それに、生きているようには見えない。
顔がこっちを向くように肩を引っ張った。
もう答えは何となくわかっていた。
だが、私のこの性格――強情で強欲な私は
探究心に抗えず、見てしまった。
ーーあぁ、見てはいけない。
ーーそれは少年ではない。
ーー見たら後悔する。
分かっている。
少年なら振り向くはずだ。