~悪魔執事とお嬢様~
だが、分かっていてももう遅い。
私は探究心の強い人間だ。
昔から、一度なにかを見たいと思ったら、
一度何かをやりたいと思ったら、
すぐ行動に出てしまう。
この私の性格にならって、私は“それ”を
強引に振り向かせてしまった。
煙と溝の臭いのせいで気づかなかったが、
ものすごい腐臭がしている。
それは予想道理、少年ではなかった。
大きな目の、白い肌をもった痩せた少女…
であったはずのものだった。
髪は少年と同じ色であり、しかも
短くてわからなかったが、
明らかに胸がある。
顔だけでは絶対に性別がわからない。
なぜなら、少女の顔面は…
何度も刻まれていた。
本当に刻んだのかわからないが、
顔はグチャグチャに赤黒く歪んでいた。
血で赤く染まっているというよりは、
茶色い土がこびりついているようだ。
「うぅ………」
吐き気が…。
胃から食べ物が逆流してくる。
昔見た書物には、
死体の臭いは強烈だと聞いたことがある。
まさにその通りだ。
少女の遺体の損傷を見てショックを受けた
せいもあるが、何よりも臭いがきつい。
可愛らしかったであろう少女の目は、
虚ろなまま、私を見ていた。
いや、見ていない。
ただの鏡に映った自分を見ているようだ。
ただ、あるものを映しているだけ。
大きく見開いた目で、私とトンネルを
映したその虚ろな目には、
恐怖を宿していた。
どれ程怖い思いをしたのだろう。
どれ程痛い目に遭ったのだろう。
目線を下に移したが、
また見たくもないものを見てしまう。
少女の骨ばったお腹に、
大きな傷跡が残っていた。
服の上から斬りつけたのだろう。
その部分だけ服が裂けている。
泥やゴミや、色々なものが染み付いた
薄茶色の服には、何よりも目立つ
赤い染みがあった。
そこからうっすらみえる
内臓のようなもの……………
いやな想像ばかり浮かんだ。
まだ、私がこの光景を見て
一瞬しかたっていない。