~悪魔執事とお嬢様~

執事と闇への余興 其ニ


疑心暗鬼も晴れ、
私は少年のもとへ向かった。

どうやら少年は、シリウスによって
空き家へ連れられたようだった。

私が気絶していたとき、シリウスは
その空き家に私を運んでいた
最中だったらしい。


空き家に向かう前に少し足がふらついた。

お父様の万能な杖がなければ
倒れていたところだ。


空き家につくと、私は真っ先に
購入品を探した。

店で買ったものはシリウスが持っていた為
安心だとは思うが、やはり心配だ。


幸い、綺麗に包装されていたお陰か
汚れはなく、そもそも箱も汚れている
箇所はなかった。

安心して私は少年が寝ている部屋に行き、
彼を起こした。



「もし、起きてください。」



少年は窶れている。
服も最初に見たときより汚れていた。

そういえば、私の服も汚れているな。

土と泥がドレスの裾にこびりつき、
煙と灰で黒ずんだ部分も多い。


元々暗い色がベースなドレスだった
お陰で目を凝らさないとわからないが、
泥だけはどうしても目立っていた。


ーーハァ


私がため息をつくと同時に少年は
目を覚ます。

目はまだ怯えていた。


あの光景を見たあとだ、無理もない。

あれは彼らと無関係な私が見ても吐き気を
催したのだから。


天井を見つめながら、虚ろな目で少年は、
しばらく何も言わず、なにもしなかった。

慰めの言葉なんて浮かばないし言うつもりもないが、聞きたいことは山ほどあった。

しかし、
私が口を開く前に彼から口を開いた。



「ルルは、さ、生まれつき体が弱くって、
母親に捨てられたんだ。

体が思うように動かないくらい弱いのに、
食べ物はみんなに譲って、
自分は残ったもんを食べる。

ロンは、大食いだけど優しくって、
子供たちの面倒よく見てて、
頼れる弟みたいな存在だったな。


カインは俺と背格好が似てて、
よくからかわれたっけ。

まだ名前も決まってない小さな赤ん坊を
連れて、俺の元へ来たときは
ビックリしたよ…

じーちゃんもばーちゃんも、
優しくて、物知りで、でも頑固で。

みんな、みんな、死んじゃったんだよな…
なんで、俺だけ生きてんだろ…」



少年は独り言のように呟いた。


起きたばかりであまり頭が
はっきりしていないのか、
幻でもみているかのような目付きだ。


私の方を見ようともしない。


普通なら、なにか声をかけるべきなのだろう。

「そんなことはない」と、否定すべきなのだろう。
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