~悪魔執事とお嬢様~
一般的に、女性は当然ながら爵位を
継承できない。
それなのになぜここまで私が自信を持っているかというと、我がフォスター家は少し特殊だからだ。
フォスターの名を持つ最初の人間_初代が授爵状の規定にこういったことを書き記している。
“直系男系男子、最悪の場合女子も許す”
例外中の例外、というか当時の国王
__ウィリアム一世はなぜこれを許したのか不安になる。
娘と直系男系男子を許すなどのものは
なくはないが、この場合は訳が違う。
娘と直系男系男子だと、初代の娘以降は
未来永劫直系男系男子になるはずなのだ。
本当になぜお許しになったのか、
当時の国王陛下に冥界で聞いてみたい。
まあ、その変わり者のお祖父様と
慈悲深い国王陛下のお陰で私は伯爵と言う地位を継げるのだがな。
私は机に散らばった書類を適当に集めて
整えた。
その書類のひとつに、領地について書いてあるものがあった。
伯爵領の事など、おおよそしか
把握できていない。
改めてお父様は凄いと思った。
あれだけ莫大な領地を全て管理していたのだから。
それに、領地内にはいくつか城があるのだが、定期的にそこでパーティーを開かなければいけない。
社交界で権威を示さなければならないからだ。
私の一番やりたくないパーティーで。
後は貴族議員としてロンドンの国会議事堂で国政に参加するなんてこともあったな。
(ただ、女は参加できない)
貴族はただただ遊んで暮らしているだけの穀潰し等と思われがちだが、割りと大変なのだ。
恵まれているのは否定しないが。
「ハァ…」
私はため息をつきながら書類を一枚一枚読んだり、サインをしたり書き足したりした。
文章を読んでいると言うよりも字を見つめている気分だ。
面白さを求めるものでもないが、
つまらない。
領の大きさ、ここ数年の領からの収入、領地内でのトラブル、払うべき税などが書かれている。
収入と言えどここ最近__1880年頃からはアメリカが安く穀物を売ってくれているお陰で衰退していっている。
何しろ領地から得る収入と言うのは主に麦などの穀物だからだ。
全く、紅茶の味もわからないあのアメリカが…
ーートントン
私がそう思っていると、扉をノックする音が聞こえた。
「入りなさい」
「失礼いたします」