~悪魔執事とお嬢様~
熱ければ美味しかっただろうが、ぬるい紅茶にはたっぷりの蜂蜜が合わなかった。
甘ったるくて、しかもまだ底にたくさん
沈んでいる。
もう紅茶を飲むのはやめて、
カスタードプディングを食べる事にした。
こちらは逆に冷えていて美味しい。
味に満足しながら少しずつ食べる。
その間、私は
ずっと宝石の事を考えていた。
しまったはずの赤い石が鮮明に脳裏に
浮かび上がる。
きっと見覚えがあるのは、赤黒い血液に
にているからなんだろう。
他にあるのかもしれないが、
今はそれくらいしか思い当たらなかった。
3年ぐらい前からセーラ達を雇ったのにも
お父様の事だから考えがあったのだろう。
そうでなければあんな愛嬌しかない
無能共に仕事を与えるわけがないし、
ヴィル爺だけに負担を
追わせるようなこともしないはずだ。
そして、屋敷を襲ったのはやはりその
ブラッド・ジェムを狙った奴らの犯行と
思うのが妥当だろう。
恐らくここ三年間、奴らが屋敷に襲撃するまではわからないにしても、何かしら
そういった兆候があったのだ。
だから戦闘力しか取り柄のない
セーラ達を雇い、他をやめさせた。
これは私のただの妄想だろうか。
自分でもわからない。
妄想でおわってくれればいいが、現に
屋敷は襲撃され、ブラッド・ジェムという
恐ろしい石の存在がある。
事実でない部分はたくさんあるだろうが、
いくらかは真実だと思った。
私は近くに畳みおかれた
新聞を手に取った。今日の朝刊だ。
『1888/4/8』
約二ヶ月たっているため、当たり前だが月日は変わっていた。
そうか、
私は2月と3月を歩まなかったのか。
そう思うと無性に悲しくなった。
しかも、2月と3月をシリウスと共にし、
殆ど苦しみ悶えていたと言うのもまた
虚しい。
私の両親を奪ったブラッド・ジェムに、
新たな怒りが沸々と募った。
オルゴールのなかで今もフォスターの
人間に守られながら光り輝く宝石に。
あの宝石のせいで、私は両親を失い、
可愛い犬のつぶらな目を失い、
契約する羽目になり、二ヶ月間を失い、
ろくな目に遭っていない。
手紙でお父様が呪われた石と記述したのもわかる気がした。
あの赤い石は、今でも私の頭を悩ませ、
精神を蝕んでいる。
「あぁ!もう!」