~悪魔執事とお嬢様~
私はライバル社を潰すために、シリウスが持ってきた手書きの報告書を見た。
ライバル社__それは紛れもなくあの
ベイリー社だった。
少年に殺しを依頼するところを除けば
まともな会社だと思っていたが、
どうも胡散臭い。
働いている人間の数と、その給料が
比例していないのだ。
いやそもそも、1日で大量の商品を
作り出しているというのに、
人手が少なすぎる。
これは……割りと簡単に潰せるかも知れない。
私はベルをならしてシリウスを呼んだ。
「失礼いたしま……」
「ワンワン!」
バカ犬を呼んだつもりが愛犬もついてきてしまったみたいだ。
あぁ、アーノルド。シリウスとしなければいけない大事な話がなければ、
今すぐお前と遊んでやれるのに。
私はアーノルドの方に足を運ばせ、
お座りをさせてからこう言い聞かせた。
「アーノルド、全く、ダメだろう?
お利口にしていないと」
「ワンッ!」
幸せそうに笑いながらアーノルドは
返事をするかのように鳴いた。
「もう、よろしいですか?」
眉間にシワをよせながらシリウスが言った。
「あぁ、呼んでおいたのにこれは確かに
失礼でしたね」
私はアーノルドの頭を撫でてからシリウスの方を向く。
「で、もうわかっているとは思いますが、
私がお前を呼んだのはこの件です」
シリアスの持ってきた報告書に指をさし、私はそう言った。
「この辺りについて、
もう少し詳しく調べてきなさい」
「といわれると思いましたので、
先ほど潜入して参りました」
自信満々にシリウスは言う。
仕事ができるところと察することに
関しては素晴らしいのに。
せめて、せめてその勝ち誇った視線を
アーノルドに向けるのはやめてほしい。
まだ私に向けてくれた方が幾分かましだ。
「それはご苦労。
では、その結果を教えてください」
「御意」
シリウスは懐から小さな手帳を取り出した。