~悪魔執事とお嬢様~
散々酷評されたり慰められたりしたが、
絵の方はなんとか誉められた。
人物画は全くもって得意でないのだが、
背景や動物なんかは昔から得意だったのもある。
まあ…人物画に関しては言わずもがなだ。
ヴィル爺の意向で顔の整ったシリウスを
モデルにしたのだが、本当に、
相手がシリウスと言えど申し訳ない。
ヴィル爺の言う通り彼の顔は整っている。
それなのに、私の絵はまるで人の顔に似た岩みたいだ。
少なくとも人間ではあるが、
シリウスと比べてみても全く似ていない。
にている部分といえば、髪と服だろうか。
「お嬢様は普段私の事が
こう見えているのでしょうか」
「こればかりは申し訳ない…
こうは見えていないから安心してくれ」
「自覚しているだけ歌よりはマシですな」
私が敬語を話していないことに関して
ヴィル爺はなにも言わなかったが、
歌の話をまた引っ張ってきた。
いい加減にしてくれ。
二人の耳が悪いだけで私は普通の音痴だ。
重度の音痴でもガチョウでも、
楽譜の読めない無教養でもない。
というか何で
二人とも私に付きっきりなんだ…
仕事を放棄するな。
(特にバカクィンテッドの__とりわけコックとメイドの監督をやめないでほしい)
とはいえ、全く別の人間になった点を
除けばそこそこ普通の絵として見れたので、これは歌ほどお咎めがなかった。
ダンスも特に何も言われず、
今日のレッスンは無事に終わった。
今は美味しい夜食をとっている。
最高に美味しいというほどではないが、悪くはない。
あまり飲み慣れない白ワインを手にとって一口のみ、私は鶏肉を頬張った。
意外に合うし、赤ワインほど渋みがないので飲みやすい。
私は二口目を飲もうとした。
しかしそのとき、確かに呻き声のような
ものが聴こえた。
「ん?シリウス、今の声はどこから」
「さあ、どこぞのネズミがセーラに
倒されただけでしょう」
明らかに人間の男性が呻いていたのに、
シリウスは私に気を使ったのか、
教えてはくれなかった。
そういえば、さっきからヴィル爺の姿も
見えないし、外から色々音が聞こえる。
セーラが食器でも割ったのかと思っていたが、そういうわけでもなさそうだ。
「……あぁ、そういうことですか」