~悪魔執事とお嬢様~


散々酷評されたり慰められたりしたが、
絵の方はなんとか誉められた。

人物画は全くもって得意でないのだが、
背景や動物なんかは昔から得意だったのもある。


まあ…人物画に関しては言わずもがなだ。


ヴィル爺の意向で顔の整ったシリウスを
モデルにしたのだが、本当に、
相手がシリウスと言えど申し訳ない。

ヴィル爺の言う通り彼の顔は整っている。

それなのに、私の絵はまるで人の顔に似た岩みたいだ。

少なくとも人間ではあるが、
シリウスと比べてみても全く似ていない。


にている部分といえば、髪と服だろうか。



「お嬢様は普段私の事が
こう見えているのでしょうか」



「こればかりは申し訳ない…
こうは見えていないから安心してくれ」



「自覚しているだけ歌よりはマシですな」



私が敬語を話していないことに関して
ヴィル爺はなにも言わなかったが、
歌の話をまた引っ張ってきた。


いい加減にしてくれ。
二人の耳が悪いだけで私は普通の音痴だ。

重度の音痴でもガチョウでも、
楽譜の読めない無教養でもない。

というか何で
二人とも私に付きっきりなんだ…


仕事を放棄するな。

(特にバカクィンテッドの__とりわけコックとメイドの監督をやめないでほしい)


とはいえ、全く別の人間になった点を
除けばそこそこ普通の絵として見れたので、これは歌ほどお咎めがなかった。


ダンスも特に何も言われず、
今日のレッスンは無事に終わった。


今は美味しい夜食をとっている。

最高に美味しいというほどではないが、悪くはない。


あまり飲み慣れない白ワインを手にとって一口のみ、私は鶏肉を頬張った。

意外に合うし、赤ワインほど渋みがないので飲みやすい。


私は二口目を飲もうとした。

しかしそのとき、確かに呻き声のような
ものが聴こえた。



「ん?シリウス、今の声はどこから」



「さあ、どこぞのネズミがセーラに
倒されただけでしょう」



明らかに人間の男性が呻いていたのに、
シリウスは私に気を使ったのか、
教えてはくれなかった。


そういえば、さっきからヴィル爺の姿も
見えないし、外から色々音が聞こえる。

セーラが食器でも割ったのかと思っていたが、そういうわけでもなさそうだ。



「……あぁ、そういうことですか」

< 163 / 205 >

この作品をシェア

pagetop