~悪魔執事とお嬢様~
「開けろ!」
ーードーーン!!
今度はなにかがぶつかる音がした。
どうやら男は体当たりしているようだ。
「あった」
銃はすぐに見つかった。
壁に掛けられていたのだ。
手にとって弾が入っているか確かめる。
しかし一つも入っていない。
私は引き出しと言う引き出しを開け、
ここを後で片付けるメイザース兄弟に
詫びながらあるものをすべて投げ出した。
ーーチャッ
嫌な音がした。ドアの金具が外れる音だ。
最悪、ビリヤードボールを投げようかと
思いながらまた引き出しを開けた。
その時、男が入ってきた。
「女がビリヤードルームなんかに入るんじゃねーよ。
手こずらせやがって」
男の声が後ろから聞こえる。
今、男はナイフを二本手にしているのだろう。
元々持っていた方と、私が投げた鶏の油と男の血がベットリついたものの二本を。
「こっち向け」
男が勝ち誇ったかのようにそう言う。
しかし、勝利の女神は私に微笑みかけた。
最後に開けた戸に、銃の弾丸がしまってあったのだ。
「フフ……」
私は鼻で笑った。
カチャカチャと銃を触る。
「おい、こっち向けっていってんだよ!」
弾を装着した銃を持った私は、引き金に
人差し指をかけた。
そうだ、この感触。
昔お父様に教えてもらったことがある。
銃は両手の方が安定して撃ちやすい、と。
もう片方の手も添えて、私は男の方を振り向いた。
「お前の敗けだ」
ニヤリと笑って銃を向け、
引き金を引いた。
「ハ__」
ーーダーン!
反動と共に弾が男の肩を貫いた。