~悪魔執事とお嬢様~

しばらくして、小さな森が見えた。
本当に小さな森だが、その奥には田園地帯がある。

森がスタートで、本番はそこからなのだ。


私はジュリアンから降りて、1度も休ませることなく走らせた彼女に詫びながら、小川のところで少し休ませた。

(そしてついでに男性名をつけたことも心のなかで詫びた)


ジュリアンと他の二匹の馬、
そしてアーノルドは、喉の乾きを潤すために川へ口をつけ、

砂漠で見つかった小さな水源を飲むかのようにようにどんどん舌を動かした。


実際に砂漠へいったことはないのだが、
本で読んだことはある。


私はその間、シリウスから渡された猟銃を受け取り、試し撃ちをしていた。

最近人間を一人撃ったものの、その銃は拳銃だし、しかもその相手は動く狐ではなかった。


自信はあまりない。目の前にある大きな木の端にある、枝を狙ってみた。

狙いを定めながら、引き金を弾く。


大きな反動と共に、ズドーンと耳を裂くような音が聞こえた。

結果としては、失敗だった。


狙った木とは別の木の枝に命中してしまったのだ。

これでさらに馬に揺らされながら撃つのは困難を極めそうだ。



「 きっと私がカナリアのような歌を披露する方が簡単だな」



私はそう呟いた。独り言のつもりで、ため息をつきながら首を掻いた。


しかし、地獄耳の老人たちには一瞬でばれてしまった。

大きな声ではっきり、
「カナリアの鳴き声まで到達するよりも絶対に、猟銃を上手く扱える方がハヤブサ並みでこざいます」と言われた。

余計なお世話だ。


二人で楽しく私の失態話をしているようなので、邪魔をせずにしばらく動物たちを休ませてからいよいよ狐狩りを始めた。


手始めに回りを見渡して、足跡も残っていないか調べてみた。


すると、狐の足跡が見えた。

私はその跡をたどり、狐を見事見つけた。
狐はすぐに逃げず、警戒する。


慎重にジュリアンを進ませた。

と、アーノルドが物音をたててしまった。


狐は驚いてサッと逃げる。

私はその一瞬の出来事に唖然とせず、すぐにジュリアンを走らせた。

そして、狐を追うことを楽しんだ。


だんだんと木がなくなっていき、森と呼ぶには些か足りない量になってきた。

それでも狐は奥まで逃げる。

そして、木が完全になくなった。
田園地帯が広がり、狐が一直線に走っていた。

アーノルドが先頭に行き、地面を強く蹴り進む。

荒波が押し痩せるかのような勢いで狐の尻尾に噛みつこうとした。

が、尻尾はするりとしなやかに逃げ、私たちを惑わす。

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