~悪魔執事とお嬢様~
大声で私が叫ぶと、三人はハっと我に
帰って抱きつくのをやめ、
頭に手を当てて申し訳なさそうに言った。
「あぁ、どうも、」
「すみません。」
「つい…。」
『つい』で済むわけないだろ…。
私は二回も
起き上がらなければいけないのか。
「はぁ。」
ため息をついて上を見上げた。
すると、シリウスが手をさしのべる。
飛びかかる使用人を止めない事を除けば
執事として適格な行動だ。
その点このバカ共は、
「ヴィル爺!」
「早く、」
「来てください!!」
と、ヴィル爺を呼ぶだけだ。
根はいいのだが、使用人としては0点だな。
「…はい。
わたくしめに何か用でしょうか?
おや、お客さまでしたか。
申し訳ありませんがお客さま。
かつて栄えていたこの屋敷も、今は
ご覧の通りでございます。」
ヴィル爺が奥の使用人部屋から出てきた。
白髪混じりの(ほぼ白髪の)灰色の髪で、
片眼鏡をかけた強そうな老人だ。
実際は弱い。
表情が読み取りにくく、鋭い目付きと
しわが、余計に強面さを強調させている。
にしても、
どんだけ落ち込んでんだ、ヴィル爺。