~悪魔執事とお嬢様~
「ヴィル爺、」
「顔を、」
「あげてください。」
メイザース三兄弟がそういった。
よくみると、みんな笑っている。
(シリウスは別だが。)
「はあ…?」
ヴィル爺が顔を上げた。
と、小難しくて怖い顔がみるみる
明るくなる。
小難しいのは直ってないが。
「久しぶり、ですね。ヴィル爺。」
私としては二ヶ月間記憶が飛んでいて、
久しぶりという気分でもない。
「お、お嬢様!!」
みんな最後は同じことを言うんだな。
「どうりで遺体がみつからない訳です。
生きておいでになったのですから。」
やはり私の遺体は上がっていなかったか。
しかし、強面顔で泣かれてもなぁ。
顔は怖いままで泣いてるってのはなんとも
不思議なもんだ。
「私は、じいは今、幸福です。
おお、神に感謝を。」
残念なことに助けたのは正反対の
悪魔だが。
「して、お連れの紳士は?」
全員シリウスを見ながら、
代表してヴィル爺が聞きにきた。
不思議がるのも無理はない。
二ヶ月も音信不通の人間が、いきなり男を
連れてきたら普通驚く。