~悪魔執事とお嬢様~



「ええ。確かに条件を提示いたしました。

助けた変わりに、
フォスター様の執事にするよう。」



「また、何故です?」



「近頃職を失くしたばかりでしたので、

ひとつ目は職が欲しかった、
という理由です。


もうひとつは、家も失っていたので、
泊まり込みの職を要望しておりました。


結果、執事を希望した次第にございます。」



筋は通っている。
さすが、嘘を付くのがうまい。


理由が本当ならば職なし家なしだった
ということだが。



「ほう。しかし、
なぜ職も家もなかったのでしょうか?」



絶対に言われるだろうとは思った。


伯爵の執事になる人間が怪しいのは
まずいからな。



「それに関しましては、
前の主人がお亡くなりになったからです。

家も住み込みでしたので。」



話をすればするほどややこしくなる…。



「とにかく、
彼が執事になったということです。」



私はそういったものの、
ヴィル爺は納得していないようだ。



「………ヴィル爺は、もうお歳なので

体力面を必須とする執事をするのは
難しいと私が判断しました。

まあ、とりあえず代理執事ということで。


あ、辞めさせる気はありませんよ?」



これはある意味本心で、ある意味嘘だ。



歳を考慮して
ヴィル爺を心配しているのは本当だが、

シリウスを執事にすることへの言い訳と
言われればそうなる。

< 35 / 205 >

この作品をシェア

pagetop