~悪魔執事とお嬢様~
「でもヴィル爺は、」
「お嬢様のために武闘を、」
「完璧にマスターしました。」
なんというか、こいつらが話すときは
短い文章の方がいいようだ。
「要するに、以前よりも強くなったと
言いたいんですね?
でも、
執事の事に関しましては決定事項です。
ヴィル爺がいくら強くなったとしても、
これは変えられません。」
ヴィル爺には申し訳ないが、
主である私に一番近いのは執事だ。
その役柄を持つべき者は、契約をした
シリウスしかいない。
別の言い方をしよう。
契約をしたシリウスと、他言無用な話を
簡単にするためには、
執事という仕事しかない。
使用人の立場で、最も私の近くにいられる
執事しか。
「しかし…」
ヴィル爺はまだ納得していないようだが、
私は言葉を遮る。
「ヴィルジー、これは、決定事項です。」
今回は、ヴィル爺ではなく、ヴィルジーと
呼んだ。
今話しているのは、
ヴィル爺とお嬢様ではない。
ヴィルジーと、当主の会話だ。
「…そうでございますか。
そこまで、その紳士を信用して
いらっしゃるのですね。」
ヴィル爺は、
折れたかのようにそう言った。
信用というよりは仕方なしにだが。
なぜそこまでシリウスを推すのか疑問に
思っただろう。
…言えない。言う気もない。