~悪魔執事とお嬢様~
服や化粧品、アクセサリーが辺りに
散らばっている。
襲撃された
ときからここはそのままのようだ。
「こちらは、
爺も手の施しようがありませんでした。」
突然ヴィル爺の声が聞こえた。
残念そうに、悲しそうに聞こえる。
私は後ろを振り返った。
だが、何も言葉が浮かばない。
次に話したのは私ではなく、ヴィル爺だ。
「こちらは、旦那様と奥さまの思い出が、
あまりにも多すぎる。
しかし、使うことさえできない遺品も
多すぎます。
それを、捨てるわけには行かず…」
私がいない二ヶ月の間、使用人たちは
使用人たちで、苦労したのか。
「…全て、物置に置いてください。」
「ん…?それは、
どういうことでございましょうか?」
「言葉通りです。
お父様とお母様の遺品や、
関連付けられるものは、全て、物置に。」
「お嬢様!それはすなわち、
旦那様への侮辱に…」
いっていることなどわかっている。
私だってバカではない。
当主の物をしまうなど、
それは捨てることとたいして変わらない。
しかし…。
私はヴィル爺の言葉を最後まで
聞くこともなく遮る。
「それは、お父様が、
オリヴァー・フォスターが当主だった
場合です。
しかし、フォスター家の主は、今現在、
この、シャロン・フォスターですよ?」
ヴィル爺は言葉を失くした。
珍しく驚きの表情が見える。
が、数秒で納得したかのように、
いつもの小難しい強面顔に戻った。