~悪魔執事とお嬢様~


けじめのために、
父と母に関連するものは視界から外す。


使用人共に、「私が主だ」と伝えるには
ちょうどいいからだ。



今の私を見た父と母は、きっと、
なにもしないで生きてほしいと言うだろ。

だが、これはお父様の復讐でも、
お母様の復讐でもない。



私の復讐だ。



「頼みましたよ。」



私は、ヴィル爺にそう言い残すと、
ドアを開けて庭へ向かった。



「お嬢様!お出かけですか??」



セーラがホウキとチリトリを持ちながら
すすまみれの黒い格好で

私に近寄ってきた。



「…いえ、少し庭へいくだけです。」



こんな格好で主に会うなど、
礼儀以前の問題だな。


もうさすがに慣れたが。



「アーノルドに会うんですか…?」



アーノルド…。すっかり忘れていた。

私の愛犬だ。


雄のジャーマン・シェパードで、
とても忠実。

ドイツからお父様が取り寄せた血統書
付きの優良な犬だ。



「会えるなら、そのつもりですが。」



「実はお嬢様、アーノルドは、
目に怪我をしてしまいまして…。

傷跡が…」



奴ら、アーノルドまで襲ったのか…?



「あ、でも、そこまで酷くはないですよ?
一応知らせた方がいいと思ったので。

いや、その前に、お嬢様ですよ!!
お体大丈夫なんですか!?」



言うのが遅い…。

私が帰った直後に言うのが普通だろ。



「え、ええ。まあ、なんとか。」



かなり曖昧な答え方をした。

なんというか、十数時間前には内臓が
飛び出してたわけだからな。

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