~悪魔執事とお嬢様~



「ムッ本当ですか?」



セーラの水色の瞳が私の顔に近づく。


一応私より歳上(24歳)なのだから、
母親っぽい部分はたまにある。

普段の精神年齢は6歳くらいだが。



「みなさんの片付けと掃除が終わったら
私は休むので気にしないでください。

あ、それと、
おば様はいつ帰ってきますか?」



おば様、
つまり、エマ・ヴェアズリーのことだ。


確か、父方の妹だった気がする。



「マダム・エマ、あいや、奥さまでしたら
もうそろそろ帰ってくると思いますよ。」



マダム・エマが通称だったから、
慣れていないようだな。

普通はマダム・ヴェアズリーだろうが、
なぜかおばさまは
自分の名前をよく呼ばせたがった。

私が帰る前までの当主は、仮でも
オリヴァー・フォスターではなく、
エマ・ヴェアズリーだから、
強制的に奥様呼びになる。



「そう、ですか。」



「奥さまは、毎日欠かさず夕方頃にここへ
来られるんですよ!」



住んでいるわけではないのか。


まあ、これほど酷い有り様だと泊まる気も
失せるか。



「おば様なら、
あり得ないことでもないですね。」



おば様の根気のよさと明るさは本当に
尊敬する。

そういうところは
お父様にも、お母様にもない。


お父様は、一言で言うとシンプルな人で、
お母様は控えめなタイプだ。



「おーい!セーラ!
サボってないで掃除の手伝いしろ!」



遠くからエルの声が聞こえる。
思ったよりも手こずっているようだ。


まあ、セーラの姿で想像はできるが。



「分かってますよ~!!!

では、私は戻りますので。」



とだけ言うと、
セーラは走って行ってしまった。


多分こけるんじゃないかと思う。

冗談なしにドジだからな。


< 43 / 205 >

この作品をシェア

pagetop