~悪魔執事とお嬢様~
あれこれ考えているうちに、私は庭へ
出た。
庭には、お母様とよく見た麗しの薔薇が
咲いている。
ただ、何か違う気がした。
お母様と見た薔薇は、色気のある女性の
ような真っ赤な薔薇だった。
だが、その薔薇は、赤黒い血の色だ。
全体的に暗い。
雨が降っているせいでもあるが、
それを考慮しても不気味なほど暗かった。
きちんと手入れされているというのに。
お母様とお父様の幻影が見える。
私が蝶を追い、走り回って、後ろで
日傘をさした母はにこやかに微笑み、
その二人を暖かな目で見つめる父。
いつのことだろう。私が5、6歳の頃か?
この頃はまだ、セーラもエルも
メイザース三兄弟もいなかったな。
今残っている使用人はヴィル爺だけだ。
私はセーラに言われた通り、雨に
濡れないよう屋根のあるところを通った。
アーノルドがいる場所に行くためだ。
大粒の雨が小降りになったり
大降りになったりすると音が変わる。
だが、一向に止まない。
アーノルドがいる小屋に来た。
小屋といっても5人は入れるが。
「ワンワンッ」
アーノルドが走ってきた。
セーラが言うように、目に傷がある。
かなり深いが、目は開けられるようだ。
「アーノルド、久しぶりだな。」
「くぅん。」