~悪魔執事とお嬢様~
アーノルドは甘えた声でお座りをし、
舌を出して尻尾をふる。
私もしゃがんで、
アーノルドの首を掻いてやった。
「ワンッワンッ。」
「お前だと敬語を使う必要もないから楽だ。
フッ、悪かったな。
二ヶ月も寂しい思いをさせて。」
やはり、笑えない。
ひきつってしまう。
微笑む、ただそれだけなのに。
「クウン?」
アーノルドは首を傾げた。
私はそれを見て、
頭を優しく撫でながら言う。
「心配するな。
もう寂しい思いはさせない。
約束だ。」
「ワンッ!」
約束など、
軽はずみにするものではないが、
ストレスはかけさせたくない。
犬に人間の言葉は通じない。
それは分かっているが、
少なくとも声のトーンでわかるだろう。
この人間は、焦っている、哀しんでいる、
怒っている、蔑んでいる、喜んでいる。
と。
「……」
「んっ?どうした?アーノルド。」
アーノルドはいきなりムクッと
立ち上がった。
「ウゥゥ!ウワンッ!ワン!ワンッ!ワンッ!!」
私に向かって、吠えている?
しきりになんども牙を向いて鳴いた。
なぜ私に吠えるのだろう?