~悪魔執事とお嬢様~
雨は大分小降りで、
もうそろそろ止みそうだ。
家のなかもさっきとは大違いだ。
これなら早急に客が来ても安心だろう。
「奥さまは、あちらでお待ちです。」
アベノが父の書斎の扉の前に立つ。
おばさまが、なぜ父の書斎に?
アベノはオークでできた木の扉を引く。
私は扉を潜り抜けると、シリウスが素早く入り込み、ドアがバタンと閉まった。
『なぜ入ってきた?』
唇だけを動かしてシリウスに訊いた。
悪魔ならこれくらい分かるだろう。
『執事ならば主に仕えるのが、
当然ですので。』
分かりやすいようにゆっくりとシリウスは
唇を動かした。
どうせ私から
離れたくないとかそんなことだろう。
構わず前へ進む。
椅子が窓側を向いている。
誰かが座っているのだろう。
恐らくおばさまが。
「お久しぶりです、おばさま。」
「久しぶり。…シャロン。フフッ。」
おばさまは椅子をくるりと回転させ、
私を見ながら微笑んだ。
オレンジ系の赤毛で、大きなきつい目。
薔薇のような真っ赤な紅を差していて、
派手で濃いという言葉が
正にぴったりな印象だ。
私も微笑み返そうとしたが、やめた。
どうせできないなら、
なにもしない方がいいからだ。
「んで?話は聞いたけど…」