~悪魔執事とお嬢様~
「なぜ、です?」
「もし継ぐとなると、恐らく
フォスター社も継ぐことになる。」
何が言いたいのだろう。
私は、うなずいてみせる。
「今、フォスター社は倒産寸前。
だから…」
「だからなんでしょう?」
「だからなんでしょうって、
倒産寸前なのよ。」
おばさまは声を荒らげた。
おばさまにとっては重大で心配なことなのだろうが、そんな些細なことで私の耳が壊れては大変だ。
それに、そんなこと、関係ない。
私はフォスター家の娘。それだけで、
理由は十分のはずだ。
相続放棄など、する気もない。
「申し訳ありませんが、おばさまが口出しすることではありません。
失礼を承知で申し上げますが、
おばさまはもうヴェアズリーの者でしょう?
相続権をどうこう言う権利など、ないはずです。」
「…でも、私はあなたを思って…」
「今の私に、情けをかける勇気が、
おばさまには本当におありですか?」
「……」
……。
長く続く重い静寂。やはり、無理か。
少しは期待していたのに。
「何をいっている、あるに決まっているじゃないか」そう言われるのを。
2ヶ月行方が分からなくなっても、
私を信じ、今まで通りの接し方を
してくれると。
「フッ,私が帰ってもあなた方は何も思わない。
むしろ、私が消えた方が
遺産が手にはいる。
これはおばさま達にとって、
好都合なのではありませんか?」
「そんなこと…!」