~悪魔執事とお嬢様~
この後はじめて、痛みを感じた。
熱い、痛い、苦しい。
息ができない。
「ハアハアハア」
声が裏返り、なにかに捕まろうと
手を伸ばす。
もちろん、そこにはなにもない。
お母様の死体が見えるだけで、
お母様の虚ろな目が見えるだけで、
鎧の男が微かに笑っていたのが
見えただけだった。
周りがうるさい。
カチャカチャと金属がぶつかり合う音が、
誰かが叫ぶ音、自分の吐息、
なにもかもが、私を疲れさせた。
あぁ、自分の命が消えていくことが
手に取るようにわかる……。
吐息はどんどんスピードを
落としていった。
高鳴る鼓動も、遅くなる。
もうじき私は、死ぬのだろう。
そう、自分に語りかけた。
そして私は力尽きて、その場で目を
閉じた。
そこからは、覚えていない。
悲しくても、涙がでない。
悲しいのかどうかも分からない。
というよりも、……とにかく苦しい。
体力だけはどうしようもないほど
弱いからな。
そもそも、こう考えを巡らせるだけで結構苦しい。
やはり、あのとき感じたように死ぬのか?