~悪魔執事とお嬢様~
私はドアノブから手を離す。
「そうか…お前は、私の夢の中でいったな。
『選ぶ道はない』と。」
「ええ。」
「あれはどういう意味だ?」
最初に聞いたときから気になっていた。
なぜ、今さらになって私の夢の中でそれを囁く?
そんなことを言わなくても私にはもう
分かっている。
「そのままですよ。
それに、あなたはあの事を、夢だと判断したのではなかったのですか?」
夢ならば
なんでも済まされるとでもいうのか?
「一度はそう判断した。
が、その夢に現実世界のお前が入り込んで
いれば、それはもう夢ではない。」
「……そうですか。
しかし、ご安心を。
実際には私はあなたに会っていません。
夢の中にすら入っていません。
どちらかといえば、あなたの脳内に"私"を
植え付けた、ということです。」
意味がわからんがこいつが勝手に私の脳を
いじったのだけはわかった。
多分夢の中で
映像を見せられただけだろうな。
「もういい。ディナーはあるか?」
「ええ。
お嬢様がだらしなく仮眠をとられたせいで
少し遅くはなりますが、
ローストビーフが。」
だらしなくは余計だ!!
にしても、ローストビーフか。重いな。
今そこまでお腹は減っていない。
だが、あのバカ(エルのことだが)が
作ったにしては豪華すぎる料理だ。
仕方ない。食べてやろう。