~悪魔執事とお嬢様~
アルトも驚いているようだが、
話す気配はない。
「ご用件は何でしょうか?」
ドア越しにシリウスが聞いてきた。
「いいからはいれ!
……いや、やっぱり入るな!
シャワーを浴び終わったらそっちへ行く。
だから待ってろ。」
「御意。」
いかんいかん、現在の私の状況を
忘れていた。
私は今、裸ではないか!!
なるべく早くシャワーを浴びて
浅い湯に浸かった。
胸に数回手を当てたが、
はっきりと魔方陣の形が小さな傷のように
なっている。
小さなものなので、目を凝らすか
長いこと胸を見つめているかしないと
わからない。
現に、アルトとセーラは気づいた様子を
見せていない。
たいした意味もなく、その魔方陣の傷を
なぞってみた。
痛くはない。
だが、代わりに傷が赤くなった。
傷が炎症を起こしたとかそう言うもの
ではなく、本当に赤くなったのだ。
気味が悪い。
いつもそれほど長くはつからないが、
早めに浴槽から出た。
着替えも結構適当に早く済ませ、
(お陰で若干胸元があいている。)
ドアを開けた。
シリウスはすました顔で立っていた。
「ちょっと私の部屋に来てくれ。」