~悪魔執事とお嬢様~
「お嬢様からお誘いの御言葉とは……。」
「ふざけなくていい。」
気持ち悪い冗談も普通にあしらうなんて、
私も慣れたものだな。
会ってからまだ数時間だろうに。
(眠っている間をいれれば
一ヶ月だろうが。)
バスタブがおいてある部屋は一階で、
私の部屋は三階なため、
私は裾をもって階段を登った。
登り終わるとヴィル爺とばったり会った。
「おや、お嬢様、もうご就寝ですか?」
「……まあ、そんなところだ。」
「して、何ゆえシリウス殿が?」
ヴィル爺は右眉をつり上げた。
眉をつり上げるのはヴィル爺の癖で、
大体何かを疑っているときのものだ。
「大事な話があるから呼んだまでだ。」
「左様でございますか。」
かなり含みのある言い方だ。
一々詮索するのも面倒で、私は直球に
訊いた。
「……何を疑っている?」
「はて?」
「ヴィル爺は何かを疑う時、
眉をつり上げるだろう?
それにいつもより言い方がきつい。」
概ね何を疑っているかくらい分かるが、
どちらにしろ誤解だ。
それをなんとか解いておきたい。
そう思っていると、シリウスが口を
はさんできた
「ヴィルジーさんが疑っておられのは、
お嬢様が色々とお変わりになった原因が
“私”なのではないか?
ということでしょう?」
「まあ、大体はそんなところでしょうな。」