~悪魔執事とお嬢様~


お父様と、お母様の人望のお陰で。


それを思い出すと、途端に
惨めな気持ちになった。


私が仮に生きて戻れたとして、

今まで道理の生活が遅れるか
自信がない。


私に人望なんてないだろう。


きっと、接してくれるのはごくわずかな
知り合いだけだ。



そんな生活を送るぐらいなら、
そんな惨めになるなら、私はいっそのこと

死んだほうがいいのかもしれない。



「ッ……ハァ」




手が濡れた。

お腹がまだ熱い。


刺された傷は当然にように癒えていない。


倒れたまま、腕の方に滴り落ちた血を
見つめると、血が魔方陣を形どった。


ーーハハ


幻覚まで見えるとはな。
せめてもっと増な死に方をしたかった。



「クスクス」



あぁ、次は幻聴、か?
あの世へいくのも後わずかだな。


いい。もう覚悟はできている。
早く楽になりたい。



「シャロン…」



「!」



確かに聞こえた。

幻聴とは思えないほどはっきりと、
誰か、男が私の名を呼んだ。


はじめて聞くが、結構印象に残る声だ。



「誰…だ…!?」



私の名を知る男へ必死に声を絞り出す。

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