~悪魔執事とお嬢様~
誰かが絶対声をあげるだろうとは
思ったが、まさかそれがおばさまとは……
「あのね、私にとってはほぼ他人事だけど
フォスター社は本当に危険なの!
分かってる!?」
ほぼ他人事か……間違っちゃいないが
言わなくてもいいだろ。
「あら、ごめんなさい声荒らげちゃって。
なんかダメね~私。
アベノ、紅茶ちょうだい。」
おばさまがアベノにそう言うと、
無言で会釈しながらアベノがおば様の
ティーカップへ紅茶を注いだ。
一応真剣に会社の事を考えてくれていたと
思うと、少しばかり驚いた。
おば様の事だから、なるようになる的な
思考だと勝手に思っていたから。
「心配は不要かと思われますよ。おば様。
それより、食事が終わられたのなら
お見送りいたしましょう。
今日は色々と忙いですし、
また日を改めて会うということで。」
私はそういって、ナプキンで口を拭いながらセーラに客人の荷物を持ってくるよう指示した。
キティは長居するつもりだったのか、
終始愚図ってばかりだ。
なんとか説得したものの、荷物は持ってこなくていい等と抜かすし、親友でなければ一喝と共に拳骨もいれてやりたかった。
「シャロン!キティは残__」
「キティの
両親が絶対に心配するから帰れ。」
とっとと帰ってほしいのが本心だが、
あながちこれも間違ってはいない。
なにせキティの両親は親バカで、キティが
帰らなかったらこっちに来かねない。
それはなんとしても避けたいことだ。
悪い人たちではないが、私は今客をたくさん呼びたくはない。
「ブー。」
子供じゃあるまいし、頬を膨らませるのも
恥ずかしいだけだな。
「帰れ。」
「わかったわよぉ。はぁ。
ではごきげんようシリウス様!」
どうやらキティは最初からきちんと帰る気だったようで、荷物をメイザース兄弟に
持たせていた。
シリウスに構って欲しかっただけなの
だろう。私ではなく。
「キティ、気をつけて帰れよ。」
「わかってるわ。」
馬車まで見送りに行ったとき、
別れの言葉を交わした。
どうせすぐにまた来るだろうが、
一応礼儀として。