~悪魔執事とお嬢様~
「その町の名前は?」
「お教えできません。ご理解ください。」
「しかしこちらも時間をさいてこちらへ
来ているわけですし、
伯爵令嬢シャロン社長の誕生というだけの
記事ではなにも見いだせないのですよ。」
クソッ!これだから記者は嫌いだ。
まるで蟻だな。
獲物を見つければこそこそと集まり、
弱らせて巣へ運ぶ。
「あまり騒ぎをたてられるのであらば
退場していただきますよ?」
「ご自身がお呼びになったのでしょう?」
「私が呼んだのは貴方ではなく、正しい
情報を伝える記者です。」
粘り強いな。
やはり記者なんて碌なやつがいない。
「私は
正しい情報を伝える気ですよ?
“素人の小娘が会社を継いで倒産させる”
という記事を書いてね。」
「……なに!?」
私が怒鳴ろうとした瞬間、すかさずシリウスは割り込んだ。
「お嬢様が逆上すればするほど、記事は
悪くなる一方ですよ?」
私の耳元でそう囁き、次に
「彼らは“正直”に記事を書きますから。」
と記者を煽った。
先ほどの余裕はどこへ行ったのか、
そいつの顔が一気に険しくなる。
「ほほう?
あんた、俺に喧嘩でも売ってんのか?」
私は、いや、喧嘩売ってるのはお前だろ。
と言いたいのを
ひたすら我慢しなくてはいけなかった。
「滅相もございません。」
「執事の無礼な態度はお詫び致します。
しかしながら、貴方の態度も些か棘を感じ
させられますね。
私はこの場で記者を敵に回そうとなど
一切思っておりません。
差し支えなければ退場されますか
それとも、このまま発表を続けても?」
「私は何も貴女に
牙を向けている訳ではない。
さあ、続けてください。」